東京地方裁判所八王子支部 昭和56年(ヒ)10号 決定 1981年2月20日
申立人 ギコー株式会社清算人 荒谷健一
右代理人弁護士 井上庸一
被申立人 ギコー株式会社
右代表者清算人 荒谷健一
主文
本件特別清算手続開始申立を却下する。
理由
本件申立の要旨は、別紙のとおりである。
一件記録によれば、被申立人会社は、昭和五六年二月一四日株主総会の決議により解散したことが認められる。
当裁判所に顕著な事実によれば、申立人は被申立人会社代表取締役として、昭和五六年二月二日、当裁判所に対し、被申立人会社が債務超過に陥入り、事業継続が困難となったので会社資産を清算して債権者に配分するとして、本件和議認可決定確定の日から一ヶ月以内に各和議債権元本額の二〇%宛を支払う、各和議債権者は前項の支払が履行されたときは爾余の元本債権および利息、損害金債権を全部免除するとの和議条件をもって和議の申立(当庁昭和五六年(コ)第一号事件として係属)をしたが、当裁判所から清算型の和議が和議法の定める本来の目的に適合しないこと、会社資産の状況からみても和議条件の合理性に疑問があること、債権者の同意協力が得られていないこと等の問題点を指摘したところ、同月六日右和議申立を取下げ、同日被申立人会社取締役四名と共に、被申立人会社の実質債務超過額は金八億円を超え、事業の継続が不可能であり継続しても債務の増加をみるだけであるとの理由でいわゆる準自己破産の申立(当庁昭和五六年(フ)第三号事件として係属)をしたが、右事件についての審問期日であった同月一二日、被申立人会社債権者である有限会社中島工業所ほか四名から会社整理開始の申立がなされるや、当裁判所の審問において、会社再建の意向を示しながら、その間に会社解散の手続を進め、同月一七日前記破産の申立を取下げると同時に本件特別清算の申立をしたものであって、一方被申立人会社に対しては債権者である加賀電子株式会社から同月四日破産申立がなされ、相当数の債権者が破産手続による厳格な清算を望んでいることが明らかである。
右の事実によれば、申立人は、和議、破産、会社整理、特別清算等倒産処理の法手続を駆使し、当裁判所の円滑な事件処理を阻害し、債権者の破産申立に対抗するため本件特別清算の申立をなしたものであって、本件申立は権利の濫用として許されないというべきである。
さらに本件を実質的に検討しても、前記経過に照らし、被申立人会社の企業清算は厳格な清算手続である破産手続によることが妥当であり、前記事実および一件記録に照らし、債権者の協力、譲歩による特別清算の見込みはないというべきである。
よって本件申立は失当として却下し、主文のとおり決定する。
(裁判官 竹田稔)
<以下省略>